「半身不随にしてやろうか」・・まだいるんですか?

ヤマト運輸営業所のドライバー自殺で遺族が提訴


 他の記事の記載を考えていたのですが、あまりの衝撃に取り上げてみます。

 以下yahooニュース(https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170331-00000560-san-soci)から引用します。   (*強調は筆者によります。)


ヤマト運輸(東京)の長野県内の営業所で、従業員の男性=当時(46)=が上司に暴行や暴言などのパワハラを受け自殺したとして、男性の妻ら遺族が、同社と当時の上司に計約9500万円の損害賠償を求める訴訟を長野地裁に起こした。遺族側代理人の鏡味聖善(かがみ・まさよし)弁護士が31日、長野市内で記者会見を開き、発表した。

 鏡味弁護士によると、男性は平成元年に入社。県内の営業所でドライバーとして勤務を始め、同15年に同営業所のセンター長に就任した。その後、23年に被告が男性に代わってセンター長に着任し、24年秋ごろから暴言や暴力がなされたという。男性は「いつか殺されるかも」などと周囲に話していたといい、26年9月ごろに鬱病を発症したとみられる。27年1月に自殺した。


 男性が残した録音には、被告である当時の上司が「半身不随にでもしてやろうか」「その場で叩き殺すぞ」「組合でも何でも泣きつけ」などと暴言を浴びせる音声が記録されていたという。


 遺族は27年8月に労働基準監督署に労災を申請し、昨年3月に認定された。遺族側は労災給付では不十分として今年2月28日付で提訴した。録音のほか、暴行された傷跡を撮影した写真や医師による診断書が証拠として地裁に提出された。


 鏡味弁護士は記者会見で「当時の上司が行ったことが不法行為であることは明らかだ。社会を支える重要な企業で、過重労働以外にパワハラなどの悪質な労働環境があることを知ってもらいたい。同じことが二度と起こらないようにしたい」と述べた。

 第1回口頭弁論は4月28日に長野地裁で行われる。裁判では、暴言や暴力といったパワーハラスメントの事実、内容の程度、病気や自殺との間に因果関係が認められるかなどが争点になるとみられる。ヤマト運輸の広報担当者は「係争中のためコメントできない。弁護士と相談して対応する」としている。


 まず、お亡くなりになった方のご冥福をお祈りいたします。

次に、この記事を読んだ時、記事タイトルのように感じました。(以下私見です。)

「まだいるのか。こんな時代遅れな管理者。」

いやぁ~まだまだいるのでしょうね。(怒)

 この事件、上記ニュース内容でも確認出来るように、

「いつか殺されるかも」などと周囲に話すなどの暴言・暴力を受けていた

「身体的攻撃」型のパワハラと

「半身不随にでもしてやろうか」「その場で叩き殺すぞ」「組合でも何でも泣きつけ」などと暴言を浴びせる

「精神的攻撃」型のパワハラの 複合タイプみたいです。

 また、すでに労災認定がされている事案ですので、裁判では不法行為等*1に対する損害賠償を加害者・会社ともに、請求されるのでしょう。


 この事件も含め、ハラスメント系(?)の事件(パワハラ・セクハラ・マタハラ等)は関係者に与える影響が大き過ぎます!!


 まず当然のことながら、被害者の方の苦しみは想像にかたくありません。

 周りの同僚などが見ている前で、罵詈雑言・暴行を受けるなど、人格権の侵害以外の何ものでもないからです。

そんな会社で働き続けたくもないでしょうが、勤務し続けなければならない方もおられるはずです。

 心のバランスを崩し、「休職」を余儀なくされる場合、以前のように復職するには、膨大な時間と職場のサポート・ご家族の理解と協力が大変重要になります。

*厚生労働省 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き

 ~メンタルヘルス対策における職場復帰支援~

http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/101004-1.html

 次に、加害者です。今回の事件では、「録音のほか、暴行された傷跡を撮影した写真や医師による診断書が証拠」として提出されている為、事実認定で、さほど揉めることはなさそうです。 であれば、会社の就業規則内「服務規程・懲戒事由」に

「第〇〇条 職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景にした、業務の適正な範囲を超える言動により、他の労働者に精神的・身体的な苦痛を与えたり、就業環境を害するようなことをしてはならない。」や

「第◇◇条 〇〇条に該当する行為を行った者は懲戒処分の対象とする。」

などきちんと整備されていて、尚且つ、実態調査・手続きをきちんと会社が行えば

「懲戒解雇」と言い渡されるかもしれません。当然、損害賠償の責任も負います。

(今回のケースでは、刑事事件に発展するのか分かりませんが、可能性*2はありそうです。だって「半身不随にでもしてやろうか」「その場で叩き殺すぞ」「組合でも何でも泣きつけ」に暴力ですよ。うちの夫婦ゲンカでもこんなのありません。)


 最後に会社です。会社側はいきなり加害者を「懲戒解雇」とすることはかなり難しいと思います。懲戒解雇をされた従業員から「解雇権の濫用」等を理由に不当解雇として訴訟を提起された場合、裁判所からパワハラを防ぐ措置を怠っていたと判断され、懲戒解雇が無効とされる可能性が高いからです。

 そして、被害者の方への損害賠償の支払い、休職された場合の復職までのケア、事件化した場合の社会的な信用毀損、社内の事後処理・従業員へのフォロー、思いつくだけで山ほどあります。


 これだけ、関係者をボロボロにする行為、「犯罪」と一緒です。


 いい大人がみっともないので、もし身の回りに、ハラスメント系(?)の事案がある場合、至急辞めさせるよう皆さん動き回りましょう。


*参考 (面白いので是非どうぞ。「裁判例を見てみよう」など秀逸です。)

   厚生労働省 明るい職場応援団

  (https://www.no-pawahara.mhlw.go.jp/


*1 当然、民事上の不法行為責任(暴言による人格権の侵害)は問われるのでしょうが、

  ・職場環境配慮義務違反による責任(職場の労働環境(パワハラを黙認してしまう会社環境)の不整備)

  ・使用者責任(業務上、会社の指導・監督等の状況)等 

 の責任も追及されるでしょう。

        

*2 刑事事件として犯罪になってしまう場合は、以下の様な容疑で起訴される可能性がある(のですか?不安。)

刑法

(傷害)

第二百四条  人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

(暴行)

第二百八条  暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。

(脅迫)

第二百二十二条  生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、二年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する。

2  親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。

(名誉毀損)

第二百三十条  公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

2  死者の名誉を毀損した者は、虚偽の事実を摘示することによってした場合でなければ、罰しない。



ごたんだ社会保険労務士事務所

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