「働き方改革」の実現ついて(所感)③

今回で最後にします。引き続き、「働き方改革」について考えてみたいと思います。

前回、前々回で「労働生産性の向上」というキーワードには、以下のような様々な論点が 含まれていると書いてみました。

・長時間労働の是正・抑制(削減にしたら存続出来ない企業が出てくるからです。)

・年次有給休暇の取得促進

・副業の推進

・ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)の推進

・同一労働同一賃金の実現   

最後になりますが、今回は、同一労働同一賃金の実現について考えてみたいと思います。

まずこちらの「同一労働同一賃金特集ページ」に、「同一労働同一賃金とは正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すもの」との記載があります。

 これは、例えば、コンビニの店員さんのように、同一の業務内容については、性別・年齢等の区別なく業務に対し、一律に支給するといったもので、「職務給」(従事する業務内容で処遇を決める方法)と呼ばれる賃金体系を前提にしています。

 ですがほとんどの事業所では「職能給」(労働者の職務遂行能力に応じて決定する給与 )が採用されていて、給与を決定する際、個人に属する条件(年齢、経歴、家族構成等)が考課の大きな割合を占めるのが現状です。

 給与に関して「正規雇用労働者と非正規雇用労働者の不合理な待遇差」を埋める方法は 2つしかありません。

  正規雇用労働者を下げる。 Or 非正規雇用労働者を上げる。かです。

 どちらも困難なのは言うまでもありません。

 これは、正社員にして見たら、「労働条件の不利益変更」と同じです。        就業規則の変更、給与規定の刷新、職務表の作成など様々な条件*1をクリアして、「不利益変更のハードル」を超えたとしても、「給料を下げられた。」という正社員のモチベーションの低下のもたらす影響は甚大でしょう。だって仕事内容も、給与も一緒なら、時間的な縛りが緩やかな方がいいですし、責任の程度も負荷のかからない労働契約にしたいと誰だって思うからです。

 また非正規雇用労働者の待遇向上については、間違いなく人件費が高騰するでしょう。そして、ママさんパートの方々は、103万(150万に改正予定)と130万(一部企業は106万円)の壁を考慮に入れることも重要です。

 上記の「壁」を超えないように、収入の調整が必要な場合、労働時間で調整するしか無く、事業所は人手の確保が困難になるかもしれません。

 今後、自分のスタイルに合わせて労働契約を締結できる環境が出来上がれば、「正社員」や「非正規」の定義が今以上に希薄になってゆくのでしょうね。(そもそも労働基準法には「正社員」や「非正規」などの記載は無く、「労働者」なので法的に正しいのですが。)

 最後に、「働き方改革」があまねく浸透すれば、本当に「改革」が起こり得ます。

 現在の労働環境を一変するような変革が求められますし、従来の環境も価値観も変えざるを得ません。 

 遅れを取らないように、出来ることから始めてはいかがでしょうか。         (事業所ごとに取るべき対応が違うので、出来ればお近くの社労士に確認してみてください。親身になって相談してもらえるはず!です。)


*1 現在、事業所で整備されているであろう「賃金規程」や「等級表」などは、新職務表に合わせて刷新が必要になるでしょう。雇用形態に合わせて当然に就業規則の変更も必要です。その変更が「労働条件の不利益変更」との判断を回避する為には、法的に許容できるだけの高度の必要性に基づいた合理性がなければなりません。

 上記の合理性の有無は,具体的には,次の事情等を総合考慮して判断されます。

・ 労働者が被る不利益の程度,

・ 使用者側の変更の必要性の内容・程度,

・ 変更後の就業規則の内容自体の相当性,

・ 代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況,

・ 労働組合等との交渉の経緯,他の労働組合又は他の従業員の対応,

・ 同種事項に関する我が国社会における一般的状況等。


ごたんだ社会保険労務士事務所

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